不定期連載小説


猛暑、その夏は猛暑だった。

俺は近くのコンビニに入り、おもむろに涼んだ。
店員の視線も冷たく、とても良い感じだ。
そして俺は無色透明のビニールがさを買い、さしながらコンビニを後にした。

透明の傘は直射日光を集めてくれる。皆が俺を見ている。
世間の注目を一身に浴びながら、ひとっぷろ浴びたくなった俺はプールへ向かう。
ない。水着がない。服を着たままはいる。問題ない。はずだ。
係員の笛を一身に浴びる。心地よい。家族連れに指を指される。
だいぶ嫌がられているようなので、目も洗わず帰る。

帰りに眼科による。やっぱり目が痛い。
服がぬれていることを問いただされたが、汗だと嘘をつく。だが、あながち嘘でもない。

外は嘘みたいに暑い。熱い。厚い。
天気予報士はそろって記録的を繰り返し叫ぶ。
嘘だ。去年も暑かった。記録的だった。毎年記録的だった。

猛暑、あの夏も猛暑だった。


猛暑、あの夏も猛暑だった。

人々はペットボトルを片手に歩く、歩く、歩く。
そしてそれをラッパ飲み。
流れ落ちる汗はアスファルトで蒸発。街中塩だらけ。

ドリンクメーカーは業績うなぎ上り。
クーラーも家庭用、業務用問わず売れる。

電力消費量も付随。東京電力パンク。
電力各社は琵琶湖畜電池化プロジェクトを計画、実行。
積乱雲から搾取した電力を鉛畜電池化した琵琶湖に貯える。
まさに電池と呼ぶにふさわしい。

秋になり、電力供給も安定。琵琶湖をもとに戻す。
現地の人によれば、琵琶湖の水質が少し改善したそうだ。


俺は、道に迷っていた。

俺は昨日の昼ごろから道に迷っていた。
もちろんこの道とはこの先の生き方や進路先ではなく、道路のことだ。
ああ、この十字路はもう4回目だ。

俺は同じコンビニに入り同じ飲み物を買う。もう何回も見た風景だ。
もしかしたらこれはデジャヴなのではないのか?
いや、違う。レシートがたくさんある。そして財布の中身もあとわずかになってきている。

俺は同じ派出所に入り同じ眉毛のつながった警官に同じ道をたずねた。
そして、俺はまたここにやってくるのだろう。

ああ、また近くを緑色の電車が走っているよ。